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「グレアム尊士の好き勝手放題」

      

 

      

『コンコンコレクター - SHOP SQUAD -』

- 2nd Season -

Chapter_04 【 凍てつく瞳 - Eyes on the ICE - 】 Part_1

 

 

 

 

 

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 夕闇色のコートを身に纏った女は不敵な笑みを浮かべ、オフィスビルの玄関に足を踏み入れた。

 2021年9月、インド北部パンジャーブ州パタンコート。

 パキスタンとの国境沿いにあるこの都市に、新興のソフトウェア会社『ILC』が設立されたのは二十一世紀のはじめだった。

 ILCはインドの多くのIT企業のご他聞に漏れず、数学が得意で、英語に堪能で、カースト制度の枠外に飛び出すことを夢見るヒンドゥー教徒が集まってできた会社だ。もっともILCの場合は土地柄か、従業員はシーク教徒のほうが多い。

「ご用件はなんでしょうか」

 肌の浅黒い、端正な顔立ちの受付嬢の口から発せられた教科書通りの応対(そして発音も教材のように正確だった)を前に、女は帽子を取って一礼した。

 帽子の中からぴょこんと飛び出した獣の耳に受付嬢は驚いたような表情を見せ、そうやって相手をびっくりさせるのを心底面白がっているらしい女…エラスティスは、仕草に似合わぬ上品な言葉遣いで言った。

「ドミノ・シグナリアのエラスティスです。社長にお取り次ぎ頂けるかしら?」

「あ、はい…少々お待ちください。ただいまお呼び出しいたしますので」

 ドミノ・シグナリア。愛狐教会より分離し独立した一派で、性愛による平和を説く過激な組織と言われている。

 その教義はカーマ・スートラに強い影響を受けているとも言われ、インドでは多くの支持者を集めているという。

 それにしても、なぜ宗教活動とは縁のないソフトウェア会社へ訪問に来たのか?

 クエスチョンマークを頭に浮かべながら、受付嬢はエラスティスを前に困惑しながらも内線電話を社長室へ繋いだ。

 

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 二週間後。

「チャー公がおめかしなんざ珍しいな。結婚式にでも呼ばれたのか?」

 パンジャーブ州パタンコート内のホテルの一室で、市場で買ったギュウシンリのジュースを飲みながら、ベケットは身につけるアクセサリーの選定に悩むチャペルの背中に声を投げかけた。

 といってもスーツやドレスのような正装ではなく、革のジャケットにスキニージーンズというラフな格好であり、普段との違いは「ちゃんと洗濯されているかどうか」という程度のものでしかない。

 そこへシルバーアクセサリーをごてごてと盛りつけた外観は、いかにもなパンクファッションだった。

 さらにレンズの大きいプラスチック・フレームの伊達眼鏡をかけると、これはもう内面とまったく変わらぬオタク女子の完成である。

「ここからちょっと離れた場所でデモパーティがあるのさ」

「デモパーティ?」

「そう、Amigaの」

「おまえ、いつの時代のイベントに行くつもりだ」

「ぶー。Amigaはいまでも現役のOSだよー」

「ウソをつけ、ウソを」

 複数枚のフロッピーディスクをハンドバッグにつめるチャペルに、ベケットは呆れ顔でつぶやいた。

 そういえば最近、いやに古臭いパソコンでなにやら作業をしていたような気がしたが…そんなことを考えながら、ベケットは相棒の新しい趣味について思案を巡らせた。

 デモはハッカーを源流とする文化の一つで、PCゲーム(当時はフロッピーディスク媒体だった)のコピープロテクトを解除し、クラックしたハッカーが自身の名前を署名がわりにタイトル画面等に登場させたのが誕生のきっかけである。

 やがて限られた容量の中で独自の映像や音楽を盛り込む工夫がなされ、クラッキングよりも創作の部分に比重が置かれるようになると、それが「一枚(ときには複数枚)のフロッピーディスクにどれだけ凄い映像や音楽を詰め込むか」という、デモ(デモシーン)として独立した文化を形成するに至った。

 フロッピーディスクの容量がだいたい1MBであるため、一部では「メガデモ」と呼ばれることもある。

 デモシーンの主流は北欧であり、一方でコモドール社製のOS(二バイト文字を扱えなかった)が普及しなかったアジア方面ではほとんど活動が知られることはなかった。

 現行のOSでデモを製作するグループも多く存在するが、中には古いOS(特にデモシーンの主流だったコモドール64やAmiga)で製作することに意義を見出す動きもあり、チャペルが参加するのはそうしたオールドスクールなデモパーティだと思われた。

「ここへは遊びに来たんじゃねーからな?ハメ外すのもほどほどにしとけよ」

「わかってますよーだ」

 苦言を呈すベケットを無視するように背を向け、チャペルはさっさと部屋を出て行く。

「まったく…」

 わがままな相棒にベケットは苦笑を漏らし、ジュースを一気に飲み干した。

 クレインはいまごろ目標地域の監視の真っ最中のはずだ。「他の面子」も、そろそろ準備を終えて集まってくるに違いない。

 まあ、それまでは…いまのところベケットとチャペルは待機中、言ってみればフリーだ。

 少しくらい趣味にリソースを振ってもいいだろう、それで仕事に支障が出るなら問題だが、チャペルに限ってそれはない。

「しかし、ぼっちでホテルにカンヅメか」

 一人はホテルに連絡員を残しておかなければならないため、ベケットまで遊びに出るわけにはいかない。

 時刻は夕方過ぎ、ベケットは昼飯の残りのチキンカレーにナンをつけて頬張りつつ、テレビのリモコンをポチポチといじりはじめた。

 

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 チャペルが向かったのは街の中心部からすこし離れた場所にあるクラブだった。

 パタンコートはパキンスタンとの国境沿いにある街で、南に軍事基地が、北には士官学校がある。

 いわばパキスタンを牽制するための布陣であり、訓練も兼ねて常に一定数の軍人が駐留している。またこの街は、軍を中心に発展してきたベッドタウンでもあった。

 インドとパキスタンの緊張状態は現在も続いており、しばしば国境を挟んで小競り合いが発生する。

 ひょっとしたら四度目の戦争はこのパタンコートが起点となるかもしれない、という思いがあるからか、この街の住民はどこか刹那的な雰囲気を漂わせていた。

「ま、それでも核で全部吹っ飛ばなきゃあ御の字よねー」

 そんなこと独り言を漏らしつつ、チャペルは熱心に声をかけてくる客引きやリキシャーマン(リキシャー=三輪バイクのタクシー。リキシャーマンはその運転手)をすげなくあしらい夜の街を歩く。

 インドとパキスタンが核兵器の保有国になって随分と長い時間が経つ。もしいま核戦争が勃発するなら、それはアメリカやロシア、まして中国や北朝鮮などではなくこの両国間の紛争が引き金になるだろうというのが定説だった。

「さーて、お目当ての店はどこかしらん?」

 いまチャペルの網膜には、進路上に目的地までのルートをナビゲートする光線が表示されていた。

 脳を機械拡張しているチャペルはAR(仮想現実)の情報を直接網膜上に投影することが可能で、現在はGPSとリンクしたナビゲーション・システムと周辺地図を視界に透過表示させている。

 なんであれば脳の命令一つでテレビを見たり、音楽を聴いたり、ゲームをプレイすることもできたが、そうした不注意は事故を招きやすい。

 もちろん…周囲の人間の顔をすべて撮影して表情をスキャンし「敵意があるかどうか」を調べ、武器を携帯しているかどうかをセンサーで確認し、半径十メートル以内の会話をすべてリアルタイムで翻訳しテキストを網膜上に投影するなど、「最低限の」…チャペルにとっては…保安処置は取っている。

 しかしテクノロジーを過信しては、いつかそれに足元を掬われる。

 科学技術の寵児とも言えるチャペルでさえ、それは変わらなかった。その事実と、「そういうものである」という諜報機関員としての認識は。

 やがて街の喧騒が小さくなったあたりで、チャペルは目的地の「クラブ・ハルペルカシュ」の看板を発見した。

 このあたりは街の中心部こそ賑やかだが、ひとたび歓楽街を離れると農場が一面に広がる「見るからにド田舎」へと風景が変貌する。

 クラブ・ハルペルカシュはそんな、風景が切り替わる境にある店だった。

 以前は農園の労働者を囲う酒場だったらしいが、孫の代で店を改装したついでに若者向けのクラブへと方向転換したらしい。歓楽街のはずれという立地にしては客入りは悪くないようだ。

 今夜はこの店で小規模なデモパーティが開催される予定だった。事前に登録した参加者は三十名前後、観客の出入りはフリー。

 飛び入り参加も歓迎とのことだったが、そんな酔狂者がいるかどうかは疑わしいところだ。

 店に入ると中はすでに大勢の客で賑わっており、ネオンライトに照らされた若者たちの笑顔が暗闇に浮かび上がっている。もう飲んでいるのか、すでに顔を赤くしている者も少なくない。

「しっかし三十年以上も前のOSを扱うイベントだから、てっきり年寄りばかりだと思ってたら意外と若い子が多いのねー」

「みんな近所にある大学の学生たちさ。年寄りもほとんどが大学のOBなんだよ」

「へぇ~」

 驚いた、というふうに目を丸くするチャペルに、近くにいた年配の男が手を差し出した。

 笑顔で手を握り返すチャペルに、男は言葉を続ける。

「主催者の『R@Zi』です。貴女はたしか…『C-Code』さん、でしたね?直前で参加申し込みがあったときは驚きましたが、狐魂の方がはるばるアメリカからいらっしゃると聞いて、感激しました」

「こっちに来たのは出張のついでなんだけどねー。ところで、狐魂がこういうイベントに参加するのって珍しいの?」

「はい。まずプログラムに堪能で、こういった…言い方は悪いですが、オタク趣味に理解のある狐魂というのは本当にあまり見かけませんね」

「もしかして、あたしが初めてだったり?」

「いえ」

 チャペルの期待を裏切るようにR@Zi(本名はラジというらしい、わかり易過ぎるハンドルネームだ)はニヤリと笑みを浮かべ、白い歯を見せながら会場のほうを指さした。

「毎年このイベントに参加してくださる狐魂がいるんですよ。市内のソフトウェア会社に勤めているらしいのですが、なかなかのツワモノですよ。当デモパーティの優勝候補の筆頭です」

「へぇ」

 R@Ziの説明に対するチャペルの反応は気の抜けたものだったが、無意識のうちに目つきが鋭いものに変わっていた。

 生来負けず嫌いゆえ、ネットゲームでも勝利を前提とした汚い手段を平気で実行に移す女である。

 さてこのあたしを差し置いて優勝候補だのとのたまう輩はどこのどいつカシラ?とチャペルが目で追った先にいたのは、黒いデニムのジャケットを羽織った小柄な少年だった。

 向こうもチャペルの存在に気がついたようで、ちらりとチャペルのほうを向き、すぐに興味を失ったように視線を反らす。

「むむ…」

 互いに第一印象はあまり良いものではなかったらしい。いや、思い過ごしかもしれないが。

 そんなことを考えているうちに何人かの作品の発表が終わり、やがて例の少年の番が回ってくる。

「次のエントリーは『Exoskull』さん、作品名は『S3 - Secret Sanctuary Star -』です」

 R@Ziのアナウンスと同時に、普段はミュージッククリップや映画のダンスシーンを流しているのであろう巨大スクリーンに煌く夢幻の星々が映し出された。

 観客が歓声を上げるなか、美しいメタロフォンの旋律とともに銀河の光芒がモニタの上を流れていく。

 いまにも目前に宇宙空間が溢れそうな圧倒的臨場感で迫る映像を、チャペルは冷静な目で観察していた。

「(ボリューミィに見えるのは拡大縮小や回転、多重スクロールを上手く組み合わせているからね。そしてスプライトにグラデーションをかけ色彩豊かに見せる…手法は技術者肌だけど、確かにいいセンスしてるわ)」

 たしか、このデモの動作環境はAmiga500だったかしら?

 MPUはMC68k、OSのバージョンは1.2…90年代初頭のデモシーン全盛期と同等のレガシィな構成だ、カオール(マジで)。

 おまけに発表はエミュレータを使わず、実機からスクリーンに投影している。

 これは主催者側の意向だったが、つまりは当時の環境で再現できないものは認めない、ということだ。

 だからデモの発表もエミュレータでデータを読み込むのではなく、実機を使ったフロッピーブートで行なうのだ。

 もちろん製作に用いたハードウェアの構成によっては、環境の違いから読み込みに失敗することもあり、それは当時でも珍しくはない光景だった。

 チャペルもデモ自体はMacOS用にビルドした自作の専用ソフトを使って製作していたが、動作確認はエミュレータだけではなく実機でも行なっている。

 やがてスクリーンを流れていた無数の星が放射線状に伸び、映像が一つの惑星にズームアップすると、黒一色だった背景が緑豊かな自然へと変化した。

 暗闇の空間から土が湧き、草が生え、木々が茂る…そのときの切り替わりがあまりに自然で、会場にいた誰もが変化の瞬間に気づくことができず、感嘆の声が上がる。

 もっとも、チャペルだけは例外だったが。

「(マシマシのエフェクトで場面転換の繋ぎ目を見せないっていうのは面白い工夫だわ。それも複雑なアニメーション・パターンを組み合わせて…容量の制限がきついから、実際に映像を描き込むんじゃなくてハードウェア側で工夫して処理してるんだろうけど)」

 あまり複雑な命令を出すのでは、Amiga500のハードウェア構成でこの速度の処理は不可能だ。

 じつに滑らかなアニメーションを見ながら、チャペルは頭の中で「自分だったらどうプログラムを組むか」と計算をはじめた。

 スクリーンでは森の中で小鳥が飛び交い、さえずる声(これも生音ではなく矩形波で再現したものだったが、電子音らしさは微塵も感じさせない)がスピーカーから溢れてくる。

 やがて俯瞰視点で森の上層を舐めるようにスクロールすると、その先に遺跡のようなものが見えてきた。

 どことなく南米アステカを彷彿とさせる意匠の遺跡の内部に入ると、そこがただの…地球上の…古代遺跡ではないことがわかる。

 まるで内臓のように周囲をのたくる機械ケーブル、生物の体内を模した漆黒の壁面。

 いつしか音楽もおどろおどろしいものに変わり、ギーガーの作風を彷彿とさせるダークな映像がしばらくの間続く。

 そのうち崩れた天井からさす光に照らされた機械…一見すると睡眠ポッドのような「何か」、防護ガラスが割れ電子制御部位が破損している…それが微かな明滅を繰り返したのち画面が暗転し、クレジットが流れたあとデモは終了した。

 映像が終わると同時に割れるような拍手が巻き起こり、チャペルも手を叩きながら、内心では複雑な想いを抱いていた。

「む~…意外な強敵が登場なのだワ」

 このデモの作者である狐魂の娘、プログラミングの能力だけではなく、映像や音楽の才能もずば抜けたものを持っている。

 惜しむらくは、こんなロートル(レトロですらないレガシィ)PCでそんな才能を発揮したところで、まったく金にならないことだが。

 しばらく別の参加者の出品したデモを眺めていたが、さすがにあれだけの映像を見せつけられたあとでは、いずれも若干見劣りすることは否めない。

 そもそも、こんな小規模マイナーイベントであんなモンスター級の作品が出てくるのが反則みたいなものだ。

 本来は自分がその役割を担うはずだったが…と、チャペルは苦笑した。

 まあいい。真打ちは最後に登場する、という言葉もある。

 イベントも終わりに近づき、いよいよチャペルの番が回ってきた。

「次のエントリーは『C-Code』さん、作品名は『Desert Mirage』です」

 カタカタカタ…聴衆が静まり返るなか、フロッピーのアクセス音がフロア一帯に響く。

 スクリーンに荒涼とした砂漠が浮かび上がり、半壊し砂の海に沈んだ高層ビルのまばらなオブジェが姿を見せたとき、チャペルは自分がガラになく緊張していることに気づき、苦笑を漏らした。

「(そういえば、最近は勝てる勝負しかしてなかったな…)」

 臆病になったつもりはないが、このところオッズの低い賭けにばかり張っていた気がする…と、このときチャペルは自覚していた。

 今回も自分が勝てそうなテーブルを選んだつもりだったが、思わぬ好敵手の登場はチャペルに意外な感情をもたらしていた。彼女自身が「自分らしくない」と思うような感覚を。

 この不安定な状況を、チャペルは楽しんでいた。

 まだ名も知らぬ好敵手のデモとは違い、チャペルの作品は2Dではなくリアルタイムで描画される3Dグラフィクスだった。

 ジャギーの荒ぶる古めかしいメッシュで表現された退廃的な空間に突如、戦闘機が遠方から飛来する。

 スクリーンに激突する勢いでやってきた戦闘機が残した白煙のあとを、無数の爆発が包む…ここで静かに存在を主張していたアンビエント・ミュージックが疾走感溢れるロックサウンドへと変化、雰囲気を盛り上げる。

 多くの参加者は派手な映像と音楽に気を取られていたが、そのうち学生の一人が、顎に手をあてつつ目を細めてつぶやいた。

「なぁ、あれ鏡面反射じゃないか?」

「え?」

 それは、倒壊したビルに嵌め込まれた窓ガラス。あるいは、軍用にしては目立ちすぎるほどギラギラした戦闘機のボディ表面。

 ドット自体がかなり荒く、ともすれば汚いノイズが入り込んでいるとしか思われないであろう模様がめまぐるしく流動しているのは、まさしく周囲の環境が映りこんでいることの証左だった。

 これが、今回のデモにおけるチャペルの秘密兵器。

 今の目で見れば稚拙極まりない映像は、しかしAmiga500での再現は不可能「なんてものじゃない」。

 別撮りの動画ファイルを再生するだけならまだしも、リアルタイムでメッシュ表面に演算するなどというのはあまりに荒唐無稽で、誰もが思いつきもしないアイデアであったろう。

 このエフェクトの効果を存分に見せつけるべく、カメラが周回やズームを繰り返し、あらゆる角度から砂漠や空や爆発の閃光が物体表面に映りこんでいるさまをアピールする。

 そのうち戦闘機の後方から別の機体が編隊を組んで登場し、壮絶なドッグファイトへと発展した。

 激しい銃撃戦が展開される、それも効果音つき。

 通常、Amiga500は音楽と効果音を同時に扱えない。当時発売されていたゲームでも、プレイ中にBGMと効果音どちらを鳴らすかオプションで設定するのが当たり前であった。

 しかしチャペルはデモがインタラクティヴでない映像作品であることを活かし、銃撃音や爆発音などのSEを直接音楽ファイルに組み込んでいたのである。

 Amiga用のサウンドフォーマットであるModファイルは基本構造こそMidi同様楽譜に近いものだが、音色の再現がソフトに設定されたサウンドフォントに依存するMidiと違い、Modは音源も内蔵することで、再生機器に依存せず作曲者の想定した音を再現できる。

 もちろんMidiよりファイルサイズは重くなるが、自分でサンプリングした音源の使用が可能という点が作曲の自由度を大幅に拡げている。またMp3等の圧縮音源とは違い、音の劣化がない。

 やがて映像の舞台は砂漠から荒野、ジャングル、海へとめまぐるしく変化し、追っ手の追撃を振り切った戦闘機は最後に宇宙空間へと飛び出していく。

 ラストにひときわ派手な爆発音が響き(それは花火の音の再現だった)、巨大な「Hello World」のロゴの登場とともに戦闘機は星雲の彼方へと飛び去っていった。

 その後クレジットの表記とともに画面がブラックアウトし、チャペルのデモは終了。

 聴衆からの喝采を浴び、チャペルは一礼する。手応えはあったが、金のトロフィーを射止められるかどうかは確信が持てなかった。

 その後参加者の投票と審査員による討議があり、今回最優秀の座を射止めたのはチャペルではなく、例の狐魂の少年(HNはExoskullといったか)に決定した。

 アンコールでふたたび優勝者のデモが再生されるなか、チャペルはバーのカウンターでバカルディ・ブリーザーのボトルを注文し、それを持って狐魂の少年がいるテーブルへと移動する。

 未成年なのか(狐魂にそういった概念があるのかはチャペル自身にもわからなかったが)、あるいは酒を飲まないのか、クラブソーダをちびちびとやっていた少年はチャペルの存在に気がつくと、やや気まずそうな表情で視線を下に向けた。

 そんなことはおかまいなしにチャペルは彼の隣に腰かけ、ラムベースのカクテルに口をつけながら、柔和な笑みを浮かべて言った。

「えへへ、負けちゃった。いけると思ったんだけどなぁ」

「ところできみの作品さ、最後のアレ…なに?」

 そう問うた少年…ブレイの表情は、遠慮がちながらどこか相手を下に見ているようである。

 しかしチャペルにはブレイの戸惑いの理由がわかっていた。ともすれば軽蔑されかねない要素が自分のデモにあったことを。

 最後のアレ…ブレイが言ったのは、「Hello World」のロゴについてだろう。

「ああ、あれね」

 やはり人によっては引っかかるか、と思いながら、チャペルは照れ臭そうに笑った。

 プログラマーにとって、Hello Worldという言葉が持つ意味は一つだ。

 それは画面上に「Hello World」と表示させる、もっとも初歩的なプログラム。プログラミングの初心者が最初に覚え実践するものであり、「世界でもっとも有名なプログラム」とさえ呼ばれることがある。

 とはいえ、それも過去の伝説になりつつある。

 こうした伝統は序々に忘れ去られ、いまとなっては「Hello World」と聞いてプログラムを思い浮かべる者のほうが希少だろう。

 本職のプログラマーでさえその存在を知らぬことも珍しくなくなり、現役のシステムエンジニアでさえHello Worldのコードを即興で書けない者がいるという。

「あたしがAmigaにハマったのって、つい最近でさ。もとはPCゲーム、最近のやつに飽きちゃって、古いの探してるうちにマシンが先祖返りよ。古いウィンドウズからDOS-V、で、Amiga」

「ふ~ん。いまどきゲームやるのにAmigaは不便しかないと思うけど」

「ま、まぁね。といってもゲームだけじゃなくて、古いマシンを実際にさわって、先人の功績を直に勉強したいってのもあってさ。ほら、温故知新っていうじゃない?」

「それでHello World?」

「初心忘るべからず、ってね。丁度良いと思って、改めて自分で再認識するには。それと、他の人にも知って欲しくて。カビくさい伝統の温かさってやつを」

「なるほど、あのメッセージにはそんな意図があったんですか」

 そう言葉を継いだのはR@ziだった。

 ジンジャエールの瓶を手に二人の狐魂とおなじテーブルにつき、向かいの席に腰かけながら話を続ける。

「テクノロジーに関わっていると、どうしてもエッジの先端ばかり気になりますが。もとは私も古いマシンの良さに惹かれてAmigaデモへ参加していたのですが、最近は事務に追われて初心を忘れていたので身につまされますよ」

「わーい。再評価ってことで、いまからあたしが優勝ってことにならない?」

「それは無理デス。さすがに」

「ちぇー。ところで、あたしが落とされた理由ってなに?」

「技術面では双方拮抗していたのですがね。美術デザインがExoskullさんに比べ、C-Codeさんは平凡だったので。といってもデモの評価としてはやや邪道なんですが、これは」

「うわちゃー。弱い点を突かれたなー」

 R@ziのデモ評に、チャペルは自らの頭をこつんと叩く。

 プログラミング能力で彼女に勝てる者はそういないが、作品のモチーフの選定やオブジェクトのデザインなど、美術関係についてはたしかに平凡の域を出るものではない。

 特異な世界観を構築し、優れたビジュアルを提供したブレイと差がつくとすればそこだろうと、チャペルは納得せざるを得なかった。

「うぅ、くやしい」

「しかしご両人の作品を見ると、時代の変化を感じずにはいられませんな」

 テーブルに突っ伏して呻くチャペルの姿が目に入らないのか、R@ziは遠い目で胸中の思いを語りはじめた。

「かつてのデモパーティは内輪のみで行なうイベント。参加者はすべて技術者、画面を見れば裏でなにが動いているのかわかる人だけがそこにいました。だから技術的に優れたことをしていれば、立方体が回転しているだけでもそれが凄いものだと誰もが理解できたのです」

 そこまで言ってR@ziは一旦言葉を切り、ジンジャエールを一口含んだ。

 琥珀色のノンアルコール飲料を嚥下し、チャペルとブレイが自分の次の言葉を待っていることを確認すると、R@ziはふたたび話を続ける。

「しかしデモの知名度が上がり、技術的な知識のない人々が閲覧するようになると、デモは次第にエンターテイメントとして楽しめる映像や内なるテーマ性が求められるようになったのです。それは…変革でした」

「技術よりもわかりやすい見た目が重視されるようになった…という話かな?」

「まあ、そう言い切れるほどメジャーにはなりませんでしたが」

 ブレイの鋭い指摘に、R@ziが気の弱い笑みを浮かべた。

 内心に抱いていた感傷を見透かされた気まずさがあったのだろうが、R@ziは咳払いをして話をまとめた。

「ともかく、お二人のデモはその極北のようなものです。さらに技術の追求も怠っていない。ふつう、あれほどの作品を作るにはチームを組むものですが、単独とは…」

「お褒め頂き恐悦至極」

「特にExoskullさんの作品が持つテーマは興味深いです。あの背景にはなにか意味が?」

 ブレイのデモに登場した原初の風景、謎の古代遺跡…そういったものへの思い入れの可否をR@ziがたずねる。

 それはチャペルが気になっていたことでもあった。

「あたしも興味あるなぁ~。あれは全部自分で考えたの?」

「なんていうか、ちょっと話しづらいんだけど」

 まさかここで突っ込まれるとは思わなかったのか、ブレイは言葉を詰まらせてクラブソーダの瓶とにらめっこをはじめる。

 たんにトークが苦手なのか、あるいは「話せない理由」があるのか…

 しばらく悩んだあとで、ブレイは寂しそうな笑みを浮かべながら話をはじめた。

「あれは、ぼくがこの星に来る前に見た記憶なんだ。断片的な風景の記憶しかないけど…それが本当に自分の記憶なのかもわからないけど。ただ、忘れられなくて…何かに、残しておきたくて」

 そこまで言って、ブレイは顔を上げ、チャペルを見つめた。

「きみは?ずっとこの星にいたのかい?それとも…『送られてきた』?」

「じつはほとんど覚えてないんだよねー。『送られてきた』、うん。つい最近、かな」

「なにか覚えてる?」

「なにも」

「いったい、誰に送られたと思う?どうして…送られたと思う?」

「わからんちーん」

「…… …… …… ……」

 でたらめな返答をするチャペルに、ブレイは眉をしかめる。

 しかしすぐ、チャペルにもそれなりの理由があるのだろうと思い直し、ブレイはやれやれとかぶりを振った。

 ここまで話が進むと、もう人間の出番はなかった。

 ガールズトークならぬフォックストークをはじめた二人に気を遣ってR@ziが席を立ち、やがてチャペルとブレイはデモ談義に華を咲かせる。

「ブレイちゃんがリスペクトしてるデモってどんなの?」

「うーん、ありきたりだけど…Crionics&The SilentsのHardwiredかな。あと、SanityのElysiumあたり。そっちは?」

「あらんメジャーどころねぇ。あたしはRed Sector IncのRSI Megademoとか、BalanceのSyndromeかな。あとLSDのJesus On E'sなんかもいい」

「けっこう変わったやつが好きなんだねぇ…」

「そっかな?」

 しばらく話し込んだあと、二人は互いのデモが入ったフロッピーディスクを交換する。

 同好の志としての記念である。いつまでも話していたいのは山々だったが、チャペルには仕事が控えていた…そう、彼女はインドまで遊びに来たわけではないのだ。

 またブレイも出勤を明日に控えあまり夜更かしはできないと言い、別れを惜しみつつ二人はテーブルを立つ。

 店を出る前、チャペルは意外な人物に出会った。

 狐魂…たしか、R@ziは「狐魂の参加者は二人だけ」と言った。出品者は。

 なるほど観客まで勘定に入ってたわけじゃないのか、と思いながら、チャペルはスペースの片隅でレッドブルに口をつける着物姿の少女に近づいた。

「意外な場所で意外なコに出会うものねぇ」

「それはこっちの台詞」

 出会いをまったく歓迎していない様子のコン=ホーが、気難しい表情でチャペルを見返した。

「あなた、なんの腹積もりがあってこんなイベントに参加しているわけ?」

「見たまんまよ。趣味で作ったデモのお披露目にぃー…そっちは?」

「趣味。休暇で」

「あやスィ…」

「そっちこそ」

 チベットの作戦で二人が顔を合わせることはなかったが、その後の(非公式な)情報交換でいちおう面識はある。

 しかしチャペルたち重装狐チームの所属について詳細は明かしていなかったはずだ。非合法活動も行なう民間軍事会社の所属だと、ベケットはそんな説明をしていたはずだが。

 必要以上に素性を詮索されたらまずいな、と考えたチャペルは、さっさと宿泊先のホテルへ戻ることにした。

 

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 ホテルへはチャペルより一足先にクレインが戻っていた。

 今回の任務における目標地点の偵察へ向かっていたはずだが、すっかり酔っ払った様子で顔を真っ赤にしているクレインを見て、ベケットがなにごとかと眉をひそめる。

「おまえ、どうした…」

「いや~普段あまり飲まないからさぁ。ちょっと…足元が…ふらつ…ヒック」

「ハァ。まさかおまえ、酒やりながら監視してたんじゃねーだろうな?」

「んにゃ、もちろん素面だよ。一日中ひっついてたけど、ありゃあ、駄目だね。完璧なローテーション組んでて、警備に穴ができる時間がないよ。宿舎も敷地内にあるみたいだし」

「それで?」

「そんで、偵察済んだら近くの飲み屋で一杯やってた。このへんの軍人が集まるらしくてさ、けっこういいヤツが多かったよ。奢ったり、奢られたり。楽しかった」

「…… …… ……」

「で」

 そこまで言って、いままで焦点の合っていなかったクレインの目つきが一瞬だけ鋭くなる。

「で…彼らが言うには、最近、あの会社と軍はあんまり仲が良くないってさ。だから…もし、何かが起きても、民間区域に被害が及ばなければ軍は出動しない…出動態勢には入るけど…だ、そうだ」

「そうかい」

「もう寝るよ。飲み過ぎた。明日がある」

「そうしな。おまえ、ひどい顔してるぜ」

「キミのよりはましでしょ」

「顔の造りを言ったんじゃねぇよ。とっとと寝ちまえ、クソ映画」

 まったくこいつは、と呆れ顔で腕を組むベケットに背を向け、クレインがおぼつかない足取りで自分の部屋へ戻っていく。

 丁度そのときチャペルが戻り、彼女の身体にクレインが肩をぶつけて通り過ぎていった。

「あら、やん、お酒臭い」

「おめーも大概だよ」

 一言謝罪もなしに去っていくクレインを見て目をぱちくりさせるチャペルに、ベケットがつぶやく。

 もっともチャペルにはあまり飲んだ記憶がない…が、それは彼女がアルコールに強いからであって、実際は相当な量を飲んでいた。

 どいつもこいつも留守番してる俺を差し置いて飲んだくれやがって、とふてくされるベケットに、チャペルがアルコール臭い吐息を吐きかける。

「ところでクーやん、偵察に行ってたんじゃないの?べろんべろんに酔ってたけど」

「さてな。あんな醜態を見せるようなヤツじゃねーんだが…大丈夫なのか?あいつ」

「しらなーい。なぁに、カレ、お仕事サボッたの?」

「さぼってねぇよ。時間で警備状況が変わらんから、いつ襲っても大差ねえとさ」

「ふーん」

「あと、民間区域に被害出さん限り軍は動かんとよ」

「あらん、薄情ねぇ。企業の特別自衛権が認められた弊害かしら」

「企業軍の保有、武装の合法化と、特権山盛りで野放しにされてる現状じゃ仕方あるめーよ。おかげで今回はやりやすくなったけどな」

 狐魂出現以後の世界的な治安の悪化と経済危機は、多くの国で治安維持機構の機能停止を招いた。

 増加の一途を辿る犯罪に、予算縮小のあおりを受け年々人員の削減を余儀なくされる警察は対処しきれず、そこへ巨大資本を背景に台頭しはじめた多国籍企業「メガコーポ」が私有地に限り特別自治権の承認を要求したのが2016年。

 さまざまな事件を経て企業の自治権が国際法で承認されたのが2018年、以後企業の独裁と暗躍、そして企業同士の対立…「企業紛争」が激化していく。

 もちろん政府や軍にとって面白い状況であるはずもなく、密に癒着している者でなければ、企業の過激な活動に対して何らかの制裁が下って然るべきと考えるのも無理からぬことであった。

「ご愁傷さまねぇ。それで、他のみんなから連絡はあった?」

「お子様連中は明朝に空港に到着予定らしい。ミリタリーどもは昼過ぎに装甲車二輌持ってくるとさ、オレたち専用のスーツも手配済みだ」

「それ、じゃあ…決行は明日ね?」

「ああ。まだ細部の調整は必要だが、明日の夜になるだろうな」

「それじゃ、アタシもすぐに寝ようかしら」

「…本当にすぐ寝るんだろうな?」

「わかる?」

 夜更かしする気満々のチャペルが、懐疑的な視線を向けるベケットにふふと笑いかける。

 酔っ払いにしては優雅な足取りで自室に戻ると、チャペルはさっそくハンドバッグから携帯型のMacコムを取り出し、データプラグをこめかみに埋め込まれた米軍規格のジャックに挿し込んだ。

 特にやることがなければクレインにちょっかいをかけに行くところだが、今夜は他に感心事がある。

 文鎮のような、ディスプレイもなにもない端末が起動をはじめると、チャペルの視覚野にMacOSのロゴが表示された。

 第二世代型NI(ニューラル・インターフェース)、またの名をDNI(ダイレクト・ニューラル・インターフェース)。

 AR技術の発展はすでに、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)の先へと進んでいた。

 コンピュータと脳を直結し、脳波で端末を操作し視覚野に直接映像を投射するNIが一般公開されたのはメガコーポが私有地の特別自治権を要求した2016年である。

 当時(第一世代型)のNIはダーマ・トロード(皮膚電極)を頭部に貼りつけて端末を操作するもので、それ自体は操作方法さえ知っていれば誰にでも扱えるものだったが、すぐにノイズ低減や反応速度の上昇を目的に、脳そのものを改造し専用のデータプラグで端末と直接接続する技術が確立された。

 それが第二世代型NIとCB(サイバー・ブレイン)…「電脳」の誕生経緯である。

 だがメガコーポの力を持ってしてもコンピュータの操作に脳改造を必要とする技術の普及はスムーズに進まず、倫理的な問題や人権団体の反発から一般に広まるには至っていない(一般にはHMDが広く普及しており、民衆による電脳への反発はHMD開発会社が仕組んだ工作という見方もある)。

 電脳改造を積極的に進めたのはメガコーポと、そして軍だった。

「さぁて、早速あの娘の成果を見せていただこうかしらん♪」

 Macコムに外付けのFDDを接続し、チャペルはブレイから譲り受けたデモ入りのフロッピーディスクを挿入する。

「まずは普通に起動してみようかしらね」

 そう思った直後には視覚野にAmigaのエミュレータが立ち上がっており、チャペルはFDのデータを読み込ませてデモを起動させた。

 動作に関してはデータをイメージ化したほうが安定するのだが、まずはFDでの動作テストも兼ねて、である。

 映像の再生と同時にチャペルが「Alt+Return」と念じると、小型のウィンドウで再生されていた動画が視界一杯に広がった。

「基本的な動作は問題なし…たしかに会場で上映したものとまったく同じねぇ」

 ひととおりデモの内容を再確認したところで、チャペルはFD内のデータをイメージ化しデコードを開始する。

「デモ作成用のツールは限られてるから、データの摘出はネットに出回ってるツールで間に合うと思うけど…普通なら。でも、あぁ、やっぱり。自前の圧縮ソフトを使ってるわね、他人の道具に満足する性格じゃないと思ってたけど」

 そんなことをつぶやきながら、チャペルは幾つかのツールを試すと同時にバイナリコードからの解読を試みた。

「さて、これでどうかしらん?」

 数分後、チャペルは自作の解析ツールにファイル摘出用のコードを打ち込み、デモファイルを読み込んだ。

 視覚野の隅に解析結果の文字列が次々と流れていき、やがて指定先のフォルダに幾つかのファイルが生成される。

「さーてと、素材はひとまず無視するとして、命令文のデコンパイルは可能かしら。さすがにクラック対策で妙なコードを打つほど偏執的とは思わないけど」

 チャペルは露店で買ったビールを口にしながら(まだ飲むのか!)、鼻歌交じりにコードを解析していく。

 やがてソースコードの再現に成功したチャペルは、とろんとした目で整然と並んだ文字列を眺めていった。

「あらん、几帳面そうだと思ってたけど、随分と綺麗なコードを書くのねぇ。見た目通りだわ」

 そう言って、チャペルは微笑んだ。その表情は本当に楽しそうであった。

 

 

 

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